「ADHD」支援の実践知

ADHDを理解し、支援を学ぼう

「ADHD」支援の実践知

ADHDを理解し、支援を学ぼう

一般社団法人 カラフルNIPPON


講師紹介

一般社団法人カラフルNIPPON
代表理事

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平 雅夫

主な経歴

筑波大学大学院にて行動理論・認知理論等、発達障害・知的障害児者の心理を学ぶ。都内私立学校にて、教員として進路指導・研究員などを歴任。生活介護施設、障害者就労支援センターなど障害者福祉の分野で活躍してきた。心理・教育・福祉の第一線の理論及び実践から構築される多面的な支援の評価は国内外にも広がっており、講演依頼・施設顧問等の依頼・招聘が国内外より後を絶たない高度な実践家である。重度知的・自閉症児者に向けた生活介護事業/グループホーム施設である「カラフル西東京」の施設長のほか、星槎大学非常勤講師・西東京市自立支援協議会会長も務めた。

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ADHD(注意欠如・多動症)とは

ADHD(注意欠如・多動症)は、年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、及び(または)衝動性、多動性を特徴とする発達障害の概念のひとつです。学齢期に現れ、その状態が継続し、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすこともあるとされており、中枢神経系に機能不全があると推定されています。

ADHDを正しく理解しましょう

ADHD理解のための“3つの理論”と実践知

「実行機能」「時間処理」「報酬遅延」とは?

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実行機能

目標達成のために、自分を制御し処理を進めていく機能のこと。以下の6つがある。

1)取り掛かり:課題を整理し、優先順位をつけて取り掛かる機能

2)焦点化:課題に対する注意の焦点化、注意の維持、注意の移動を適切に行う機能
3)努力:課題を遂行するために意識を覚醒させ、努力を続け、適切な処理速度を維持・調整する機能
4)感情:自らの欲求不満を管理し、感情を調整する機能
5)記憶:ワーキングメモリーを活用し、想起する機能
6)行動:自分の行動を客観的にモニタリングし、必要に応じて自己抑制する機能

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時間処理障害

• Temporal Processingの障害として、英サウサンプトン大のシュヌガバーク・エドマンド教授の報告
• 「3時間で作業を終わらせる」などの段取りができなかったり、時間を守ることができない「時間処理機能(=タイミング)の異常」があると指摘。
• 時間処理機能については、側頭葉・小脳がつかさどっている可能性を指摘。既存の薬物治療の見直しに言及。

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報酬遅延勾配

報酬の得られるタイミングが遅くなればなるほど、その報酬の価値を低く見積もる傾向のこと。

行動をした直後に報酬酬を与えることは効果的であるが、報酬までの遅延が大きいとその強化価が低下してしまうということ。ADHDは報酬の遅延を「嫌う」とする考え方があり‘delay aversion’とも呼ばれている。

実行機能

  1. 01

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    「実行機能が弱い」とどうなるの?

    • やりっぱなし
    →「どうしていつも中途半端なの」・・・


    • 受けた仕事をやりきれない
    →「断ればいいのに」「終わらずイライラしてる」・・・


    • 優先順位をつけられない
    →「まだ手を付けてないの」「要領が悪すぎる」・・・


    • 自己チュー
    →「こっちの話も聞かないで」「感情の起伏が激しくて」

  2. 02

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    従来の支援は・・・

    • やりっぱなし
    「どうして中途半端なの」⇒「アウトプットを意識して」


    • あれやこれや動きすぎ
    「キャパオーバー」⇒「できないことは初めに言いなさい」


    • 優先順位をつけられない
    「まだ手を付けてないの」⇒「メモに書き出して」


    • 自己チュー
    「こっちの話も聞かないで」⇒「少し黙ってよ(叱責)」

  3. 03

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    実行機能への実践知

    〇:ゴールを明確に伝えましょう。
    〇:ゴールに向けて活動を順序だてましょう。
    〇:複数の活動には優先順位をつけましょう。
    〇:キャパシティを調整しましょう。


    ×:「きっとわかるはず」だと不足することがあります。
    ×:口頭の指示だけではわかりにくいことがあります。
    ×:経験を積むとできるものもありますが難しいままのものも。
    ×:メモや付箋の取り扱いを教えないと貼るだけになります。

時間処理

  1. 01

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    「時間処理が弱い」とどうなるの?

    • 時間がゆっくりすぎるなら・・・
    「退屈になる」、「待ちきれない」


    • 時間が早くすぎるなら・・・
    「遅刻する」、「時間を忘れて没頭する」


    • 未来を描きにくいなら・・・
    「衝動的に行動する」、「行動しようとしない」


    • 過去を描きにくいなら・・・
    「経験から学びにくい」、「同じ失敗を繰り返す」

  2. 02

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    従来の支援は・・・

    ・「退屈になる」、「待ちきれない」
     →「我慢しなさい」、「ルールを守りなさい」


    ・「遅刻する」、「時間を忘れて没頭する」
     →「目覚まし時計を使いなさい」「タイマーを使いなさい」


    ・「衝動的に行動する」、「行動しようとしない」
     →「深呼吸してから動きなさい」「計画を立てなさい」


    ・「経験から学びにくい」、「同じ失敗を繰り返す」
     →「以前のことを思い出しなさい」「よく考えて」

  3. 03

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    時間処理への実践知

    〇:こまめに休憩を確保する
    〇:腕時計をする。目のつくところに時計を置く
    〇:アラームを活用する
    〇:約束時間を前に設定してもらう
    〇:生活リズムを整える(25~50%は睡眠に課題)


    ×:スマホでも時間は分かるが、気にしなくなります。
    ×:1人の力では時間が管理しにくいことがあります。
    ×:説教などで自覚を促すだけでは不足することがあります。

報酬遅延勾配

  1. 01

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    「報酬遅延が苦手」だとどうなるの?

    • すぐに結果の出ないことにやる気が出ない
    →「頑張った姿を見たことがない」「やる気がない」


    新しいことに興味を持ちやすい
    →「また、買っちゃったの」「習い事はいくつ目?」


    同じことの繰り返しに飽きやすい
    →「もう辞めたの?」「どうせ長続きしないんでしょ」


    • とっさに嘘をつく・繕う
    →「バレバレの嘘をつく」「後でしっぺ返しが来るのに」

  2. 02

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    従来の支援は・・・

    • 「やる気が出ない」
    →努力の意義や価値を諭す。やる気を出すように励ます。


    • 「また、買っちゃったの」
    →家計簿をつけなさい。自分でお金をためて何とかしなさい。


    • 「もう辞めたの?」
    →就労支援センターにつなげよう。自分が困るまで待とう。


    • 「とっさに嘘をつく」
    →嘘をついてはいけないと諭す。ペナルティーを科す。

  3. 03

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    遅延報酬への実践知

    〇:スタートが大きくならないように課題を分割する。
    〇:「誉める」等のフィードバックを短めのサイクルで提示する
    〇:家計簿ではなく、電子マネーなどを活用する。
    〇:ナチュラルサポートとパーマネントサポートも実施する。


    ×:全部が完了したら誉めるのではタイミングが遅延します。
    ×:家計簿や貯金などは、かなり高いハードルです。
    ×:嘘を責めても繰り返すことがあります。
    ×:職場や学校に慣れても変化しない部分があります。

・理解されず苦しんでる本人がいる・・
・本人が自覚せず苦しんでいる周囲がいる・・
・少しのエラーで否定・排除される人もいる・・

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私たちは、「心理」「教育」「福祉」の分野で、30年以上、障害に関する対人援助の「研究」と「実践」の両面に携わってきた平代表を中心に、自閉症児者や重度知的障害児者、発達障害者に対し、応用行動分析(ABA)や認知行動療法 (CBT)などの理論と実践に裏打ちされた専門的な支援を行っています。

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