グループホームの利用者さんにとって食事は楽しみな時間の1つです。また心と身体の健康を保つ大事な時間でもあります。

イベントや季節に合わせた食材を使ってみたり、リクエストにお応えしたメニューを提供したり・・様々な工夫によって、食事を通じたコミュニケーションが可能になり、利用者さんと支援者の間の絆を深めることのできる大切な時間となります。


ここでは、東京都西東京市田無にある障害者グループホーム「カラフル西東京」で提供している食事を参考に、グループホームで食事メニューを検討する際のポイントをご紹介します。

食事メニューを検討する際に注意したい“9つ”のポイント

  • 栄養バランスの確保

    炭水化物・たんぱく質・脂質を中心に、ビタミン・ミネラルを過不足なく組み合わせた献立を設定します。家庭的な調理で旬の野菜を取り入れると、無理なくバランスを保つことができます。

    また「日本人の食事摂取基準」に基づくエネルギー量や各栄養素量を目安にし、管理栄養士が献立を作成するか、厚労省ガイドラインを参照することなども推奨します。

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  • 咀嚼・嚥下機能に応じた食形態

    咀嚼力や吸引力など利用者の機能に応じて「刻み食」や「ペースト状(ミキサー食)」などにして提供したり、職員による食事介助体制も整える必要があります。また咀嚼・嚥下障害、食事摂取量、体重変化を看護師や管理栄養士など多職種でアセスメントし、ICFを用いた栄養ケア計画を立案・見直ししていきます。

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  • 安全・衛生管理

    調理器具や食器は適切に洗浄・消毒し、衛生的な厨房環境を保ちます。当然、スタッフの手洗い・手指消毒の徹底も必須です。

    加えて、食事中の見守り・サポートはもちろん、利用者が無理なく落ち着いて食べられるよう、ゆったりとした楽しい雰囲気づくりが重要です。

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  • 個別ニーズ・嗜好への対応

    利用者ごとのアレルギー情報や持病に注意して食材や調理法を調整します。特にアレルギーは事前把握・伝達を徹底しましょう。

    また、利用者の感覚特性による味覚や食感の好き嫌いも把握しておき、好まれる味付けや調理方法を取り入れるなど、利用者1人ひとりと対話しながらメニューを考案しましょう。

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  • メニュー作成とローテーション

    旬の野菜や果物とった季節食材を取り入れることで、彩りや味の変化をつけ、栄養価も高められます。また同じメニューが続かないよう一定期間でローテーションを組むなどして配慮しましょう。地域の特産品やイベント食を織り交ぜると楽しみが増します。

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  • 文化・季節性・見た目の工夫

    暖色系の食材(トマト・ニンジン等)は食欲増進、寒色系(キュウリ等)はリラックス効果が期待できるなど、色彩心理を積極的に活用しましょう。またお花見やBBQ、クリスマスといった行事食や地域特産の食材を取り入れることで、食事を楽しむ機会を増やすことも期待できます。

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  • 入居者参画による自立支援

    利用者さん自身が買い物や調理を補助する機会を作ることで、認知機能の向上や社会生活力の育成に寄与します。

    食事の場をコミュニケーションに活用することで、日々の生活の質(QOL)向上につながります。

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  • スタッフ教育・多職種連携

    定期的な栄養ケア計画の見直しや栄養スクリーニングを管理栄養士が主導し、適切な形で職員にフィードバックします。また、サービス管理責任者や生活支援員、看護職、作業療法士(OT)、栄養士などで個別支援会議を行い、食事ケアプランを他計画と連動させることも重要です。

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  • コストと食材調達

    施設内で調理をするか(自炊)、宅配サービスを利用するか(配食)のどちらを選ぶか、またそのバランスも重要です。前者では仕入れコストを抑えつつ温かい食事を提供できます。一方、後者は管理栄養士監修メニューで食材カット済みでレシピ付きであるため利便性が得られます。

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一般社団法人カラフルNIPPON
代表理事

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平 雅夫

経歴

筑波大学大学院にて行動理論・認知理論等、発達障害・知的障害児者の心理を学ぶ。都内私立学校にて、教員として進路指導・研究員などを歴任。生活介護施設、障害者就労支援センターなど障害者福祉の分野で活躍してきた。心理・教育・福祉の第一線の理論及び実践から構築される多面的な支援の評価は国内外にも広がっており、講演依頼・施設顧問等の依頼・招聘が国内外より後を絶たない高度な実践家である。重度知的・自閉症児者に向けた生活介護事業/グループホーム施設である「カラフル西東京」の施設長のほか、星槎大学非常勤講師・西東京市自立支援協議会会長も務めた。

カラフルNIPPONにご相談ください

私たちは「心理」「教育」「福祉」の分野で、30年以上、障害に関する対人援助の「研究」と「実践」の両面に携わってきた平代表を中心に、自閉症児者や重度知的障害児者、発達障害者に対し、応用行動分析(ABA)や認知行動療法 (CBT)などの理論と実践に裏打ちされた専門的な支援を行っています。


また、自閉症スペクトラム症、知的障害、発達障害、強度行動障害の方たちの支援に携わってきた知見があります。子育てや進路、支援方法、親亡き後の生活など、少しでも不安・お困りのことがございましたら、お気軽にご相談ください。


加えて、カラフルNIPPONでは、今年度を「我が国に障害者福祉のエッセンシャルズを提案する元年」と位置付け、支援方針に基づく支援手法の仕組化・体系化を進めています。その一環として社外に向けた発信にも注力し、共に障害者福祉のエッセンシャルズを構築していく仲間を増やしていきたいと考え、研修会を“毎月”実施しています。

研修会の予定は以下のブログで発信しておりますので、ご関心のある方、またお知り合いの方がいらっしゃいましたら、是非お誘いの上ご参加ください。


障害のある当事者はもちろんご家族の方々を中心に、支援者、企業やボランティアの方といった障害福祉に携わるすべての方と共に手を取り、支援の輪を広げていけたらと思います。

食事作りを通じた職員の成長

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